連載Essay 「千年後の僕たちへ 」     暮らし・自然・歴史・文化

  〜時間(いのち)の島・沖縄から、過去・現在・未来をつなぐ物語を織りなしていきます〜

※ 2014年夏に待望の長男が誕生しました。
  子育てのため、当エッセイを書くのはしばらくお休みいたします。
  かわりに、医療福祉生協の機関誌「comcom」にて連載中の【フォトエッセイ】
  どうぞごらんください☆
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第11回   サバニ大工 ~ 糸満うみんちゅのこころ ~ 航海編

© Shinya Imaizumi


今は、ものごとの本質をとらえることが難しい時代だと思う。
家の外でも、中でも、たくさんの情報があふれている。

そのなかで何を選択し、何をあきらめるのか。
僕らは常に問われている気がする。

では、サバニの本質とは何だろうか。
樹であること。
樹が、人とともにあることの美しさ。
伝統を継いだ存在であること…

そしてシンプルに、海に浮く乗りものだということだろう。



2013年7月19日、糸満から北へむけて、一艘のサバニが旅立った。
この連載でずっと見つめてきた、あのサバニである。

「サバニ搬漕プロジェクト」
“搬送” と “帆走” とを掛け合わせたネーミングの通り、
海洋博公園へのサバニの納品を、海路から行おう、ということだった。

昇さんの手がけた南洋ハギはすでに陸路から運ばれていた。
だが本ハギを運ぶに際し、謙さんをはじめ、ハマスーキのメンバーや
周囲の人々が思うことがあった。
それは、“サバニは海にあってこそサバニ” という深い想いだ。


お客様である海洋博の方々との度重なる調整の末、
サバニはこの日、昔のひとがしてきたのと同じように、糸満の海辺に浮かべられた。
伴走船と並んで小さく浮かんでいるその佇まいは、まるでミニチュアだ。

白銀堂で航海の安全を祈願し、海へ。
糸満から初日は恩納村、一夜明けてから本部半島の海洋博まで。

それほど距離はないけれど、何が起きるかはわからない。
外洋に接する緊張感と、サバニをイベントでなく日常のなかで走らせたい、
という強い意志とがあわさった旅だ。

そして海洋博につけば、もうサバニはそこのものとなる。
サバニはこの旅を体の内側に抱いて、その先を永く生きていくことになる。
サバニは海に浮かぶ乗りもの。

人にとってもサバニにとっても、
その “海の記憶” を宿すための、大切な旅となるだろう。

長い間、サバニ製作の物語を読んでいただきありがとうございました。
材木から始まった、もっと遡れば山の土から始まったサバニの旅。
ようやくの船出です。
海洋博では展示品として、多くの方に日々海のことを伝える役割が待っていますが、
海での姿を見られるのはこれが最後かもしれません。

そのゆたかな旅の模様を、写真でどうぞ、ご覧ください。

© Shinya Imaizumi
         “意地ぬ出らあ手引き、手ぬ出らあ意地ひき” 白銀堂にはその石碑がある。

© Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi

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                                かつての海岸線の名残が残る。


© Shinya Imaizumi

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                     3.11から、風景の意味は確実に変わった。

© Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi  伴走船から潮を見守る。

© Shinya Imaizumi

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                 水面すれすれに滑っていく。磯乃さんと守谷さんがフネと同化している。


© Shinya Imaizumi


「サバニは乗りものなんだから、乗って確かめないと。
 ウミンチューという存在はフネをよく知ってるからね。
 1ミリ違ったら “カンナかけてくれ” の人たちがいたんだよ。
 そういう世界なんだよ。

 今はベニヤでつくってもサバニの時代さ。
 そんだけ素人の集団がサバニを見ている。
 これを私なんかが変えていかないといけないわけさ。

 マスコミなんかみてごらん。紹介するほうも素人さね。
 こういうひとたちが「これがサバニ」って紹介してる。
 これは恐ろしい」(大城 清)


© Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi

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© Shinya Imaizumi
                       サバニは “樹”。海の上でも、ぶれない美しさがあった。

© Shinya Imaizumi


© Shinya Imaizumi

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© Shinya Imaizumi


「このサバニは、帆柱がやわらかい。
 だから引っ張る力がないと、波に揺られて勝手に帆柱が遊ぶわけよ。
 上のほうに重量もあるでしょ、いつも風をうけてるわけよ。

 船は船で波に揺られるわけだから、こうぐちゃぐちゃに動くからよ、
 バランスとれないわけさ。
 しかし、フー(帆)張って、強い風受けて、
 一定した力が加わってるときは何ともないよ。

 だから、レースでも勝った試合と負けたときを比べてみると、
 どこがどう違うのかわかる。
 だから私がフーを持つときは力かげんを調整するさ」(大城 清)


© Shinya Imaizumi

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                    清さんが帆を持つとぐいぐい進む。作った人を分かっているようだ。


© Shinya Imaizumi

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                         読谷沖。浜の向こうに昔の村落が見える気がする。


© Shinya Imaizumi

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                  古い古いサンゴたちの堆積。僕らの暮らす島の土台がはっきりとわかる。

© Shinya Imaizumi
                               残波岬は逆風。交代で漕ぎ続ける。

© Shinya Imaizumi

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© Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi サバニの世界へ誘ってくれた津輕さんと乗る。

© Shinya Imaizumi


「性能がいい。美しい。そういったのをトータルで考えて、
 お金の価値と比べてみて、みんな自分のフネを選ぶさ。
 これがないひとたちは、安いというだけで選ぶ。

 サバニというものの評価をね、今一度考えてみる必要があるんだよ。
 世の中のものみんなそうさ。
 なぜ安いのか。よく私も言われるわけよ。
 “清さんのサバニ、高いね”

 安く作れるもんじゃないわけよ。
 自分の生活レベルを落として安くしても意味がないさ。

 だからみなさんには “南洋ハギもありますよ” と言うわけ。

 本ハギが一番高くて、南洋ハギが安くて、その中間もある。
 南洋ハギはハギ舟のだいたい7割ぐらいの値段で買えるわけよ。
 もちろん私がつくっても安いさ。

 きまって “性能は落ちるの?” というけど、
 新太郎丸がレースで連勝してるさ。あれ南洋ハギさ」(大城 清)


© Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi
                  宿泊地が近い。一緒に漕いだ後に眺めるサバニは、とても近くに感じる。


© Shinya Imaizumi

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                         サバニは、潮を一日めいいっぱい感じたことだろう。

© Shinya Imaizumi


「あのね、サバニっていうフネはみんな「美」なの。美しさ。
 ほんとに “一分(いちぶ)” なんだよ、美しさっていうのは」(上原 謙)


© Shinya Imaizumi


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© Shinya Imaizumi
                                 二日目の朝は、凪だった。

© Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi

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                           潮を吸いこんだ杉の肌は、しっとりと美しい。


© Shinya Imaizumi © Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi © Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi


© Shinya Imaizumi


              © Shinya Imaizumi
                           穏やかな朝。伴走船もゆったりと船出する。

© Shinya Imaizumi


© Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi © Shinya Imaizumi
                        万座毛の崖からサバニを待つ。足元にも小さないのち。


© Shinya Imaizumi

© Shinya Imaizumi
                    広い世界の小さな点。それがサバニであり、僕たちの生でもある。


© Shinya Imaizumi

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                  貝を求めてサンゴ礁原を行くお母さんと、海原を風を受けて進むサバニ。
                  人の営みとは、本来、こんな風景のことをいうのではないだろうか。


             *


© Shinya Imaizumi
             海洋博のビーチに着いた。新たな世界の人々に囲まれるサバニ。


© Shinya Imaizumi



© Shinya Imaizumi
                          このサバニの声をじかに聴けるのは、今日が最後。

© Shinya Imaizumi



    © Shinya Imaizumi

    © Shinya Imaizumi
                  最後まで自然の力と人の力で、注文主に届けることができた。


© Shinya Imaizumi

    © Shinya Imaizumi

    © Shinya Imaizumi
        また一艘、サバニづくりを終えた清さんたちの、次の挑戦が始まる。    


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  サバニについて興味のある方は、糸満海人工房までどうぞ☆



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【 過去のエッセイ一覧 】

第1回・与那原大綱引き
第2回・NOオスプレイ沖縄県民大会
第3回・南城市長杯・帆掛サバニレース2012
第4回・迷子の母さんガニ
第5回・ウークイ・エイサー
第6回・サバニ大工 ~糸満うみんちゅのこころ~ その1
第7回・サバニ大工 ~糸満うみんちゅのこころ~ その2
第8回・サバニ大工 ~糸満うみんちゅのこころ~ その3
第9回・サバニ大工 ~糸満うみんちゅのこころ~ その4
第10回・サバニ大工 ~糸満うみんちゅのこころ~ その5



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