Gallery2 自然、風景、旅、世界、写真
旅ではカメラがないほうがいい。そう思う時があります。…けれど実際にそうすると、撮りたくてたまらなくなったりする。そしてどこにいても、私は沖縄を通して世界を見ています。
北海道の山
パスポートを持たずに行ける、沖縄から一番遠い場所、北海道。南の端から見る北海道は、憧れの地です。またこの地は沖縄と同じように、自然に抱かれて暮らしていた生活から、近代に入って、力により抑圧されてきた人々の歴史もあります。
北海道の自然はどこも印象的ですが、なかでも“カムイミンタラ(神々の遊ぶ庭)”と呼ばれる大雪山の山々と、そこに暮らすいのちには強く惹かれ、たびたび訪れてきました。遠いので、なかなか長く居ることは出来ずにいますが、自分の中の“もうひとつの尺度”として、事あるごとに想いをはせる世界です。
屋久島
初めて屋久島に行ったのは1990年でした。そのころはまだ縄文杉までの木道もなく、出会うひとも、静かに歩く個人のかたが多かったと思います。霧に包まれた山道をひとり登っていき、ふと何かを感じて顔を上げるとそこには、おおきなおおきな縄文杉が立っていました。涙が自然と溢れ出たのを覚えています。
沖縄から一番近い高山として、琉球弧の仲間の島として、雪や温泉など、沖縄にないものを持つ島として、いつも屋久島には魅了されました。今は入山制限を設けたほうが良いくらい、森で落ち着ける場所は少なくなりましたが、森と、島人との関わりを大切に、島の未来を決めていってほしいと願っています。
『 季節の旅人 』
2004/長野での写真展より
2003年から2004年にかけて、長野で暮らしました。沖縄は給料が安いので、出稼ぎに出かける人が多くいます。それを「季節に行く」と言います。私の職場はメガネレンズを製造する工場の夜勤でした。山が好きなので、長野の伊那谷を選びました。
仕事明けの朝、沖縄にない雪が普通に積もっているのを見るだけで無性にうれしく、夏も冬も週末になるとアパートから見えるアルプスや気になる場所に出かけていきました。
1年がたち、勤めていた工場で写真展をさせていただきました。沖縄に帰る前には、北アルプスを北から南までをのんびりと縦走しました。四季を通して信州に暮らした1年は、旅人と定住者との間を自由に行き来した、不思議な時間でした。
『 浄土 』
2005/私家版写真集より/原版:ネガ
九州に根を張る明願寺の住職・久保山教善さんの依頼で、お寺のまわりの風土を記録することになりました。お寺の周りは、竹林と雑木林、田んぼが彩りよくデザインされた土地ですが、時代とともに風景が変わっていく事は、ここでも同じでした。
沖縄と違いどこまでも平野が続くので、まだまだ緑は豊富と想像していましたが、実際には、土地の“魂”のようなものはすでに多くが失われていると感じました。
数日間お寺にお世話になり、心をしずめて撮影した写真たちから、A3ノビ版の分厚い写真集を編みました。ずっしりと重いその本には、変わらないもの、変わりゆくもの、その両方が写し出されていました。
『 僕の生まれた場所 』
2006/私家版写真集より
「父母にいつもカメラを向けながら、その二人にちゃんと写真を見せたことがありませんでした。そこで、今回の滞在中に僕が目にしたもの、シャッターを切った結果を、一冊に編んでみることにしました。
60日間のフィルム1700コマの瞬間から120点を選ぶ、という作業の中で、“息子でありながら写真家でもあること”の意味が浮かび上がってくるように感じられたのは、大切な体験でした。愛する父母に、ひとまずの感謝をこめてアルバムを贈ります」
~あとがきより~
『 さまざまな風景 』
旅をすると、住んでいる場所が恋しくなります。風景にはいつも、自分の姿が投影されているのでしょうか。
溶岩の上に懸命に根を張り、ひとつずつ、自分たちの居場所を固めていく。
アユと泳ぎながら川の水をそのまま飲めることは、本当の幸せだ。
露の降りた草原が光に輝く。小さないのちの営みが今日も始まる。
厳しい登攀を終え樹林帯へ。ダケカンバの静かな姿に、涙が出そうになる。
独りぼっちで寂しそう、と見ていたら「いいや、ふたりだよ」と樹が答えた。
森から海までが繋がって残されている神奈川でも貴重な森、小網代。
最果てにひとりやってきた。ザックを下ろし港へゆくと、ウミスズメもひとり。
夏シーズンはまだ。静かな山稜で夫婦の草を食む音だけがひびく。
寒さ、空腹、出会い、喜び。たくさんの感情を抱えて生きている。
まるでずっとここにいた岩か樹のようになって、朝焼けを見ていた。
雪洞で数日吹雪をやりすごすと、月光に照らされた静かな世界が広がった。
こどもの頃、雪は冷たいものと思っていた。けれど、雪の中は暖かかった。
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